特集 悪性腫瘍
序
編集委員
pp.649
発行日 1975年10月20日
Published Date 1975/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208248
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悪性腫瘍の診断と治療は,近年の臨床医学の中で重要な部分を占めている。他の疾患が臨床的にも基礎的にも研究の進歩によつて治癒率が高くなつている中で,癌はなおらないという印象を与えているからであろう。
臨床的には皮膚癌が煙突掃除人に多いという報告が1775年に出ているが,実験的に癌を発生させることはなかなかできなかつた。1914年になつて,山極・市川によつて動物に癌を発生させることに成功してから,発癌物質や,発癌機構の研究が行なわれるようになつた。比較的最近になつて,分子生物学,量子生物学というような分子レベルの研究が進み,基礎医学の中に取り入れられ,抗癌剤や放射線学の進歩と相まつて,悪性腫瘍の研究が急速に発展したといえよう。一方ウイルスと発癌との関係も古くから論じられていたが,Epstein,Barrがバーキット腫瘍でウィルスを発見したことから,臨床医学との関連ができて,診断にも治療にも応用されるようになつてきた。このウイルスが上咽頭腫瘍に関係が深いことは,既に報告されている通りである。
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