特集 外科患者・薬物療法マニュアル
Ⅵ.注意すべき状態の患者への薬物療法
9.妊娠と授乳時の患者
田島 知郎
1
,
久保田 光博
1
1東海大学医学部第2外科
pp.256-257
発行日 1992年10月30日
Published Date 1992/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407901017
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30年程前,妊婦への不適切な薬物投与による「サリドマイド禍」で世界中にアザラシ状奇形児phocomeliaが誕生し1),医学生として多数例を目撃した筆者の脳裏から今も消えない.女性患者では妊娠の可能性を常に意識し,最終月経を必ず確かめ,授乳中か否かも問診することが大切である.本稿では,胎児・乳児への影響を中心に記述したい.
薬物療法の適応は,必要性と起こり得る副作用のバランスの上で決められ,投与は必要最少量,最短期間とするべきで,この原則を妊娠・授乳時には一層厳格に守りたい.医薬品説明書の「使用上の注意」欄の記載事項に精通し,逐次改訂される内容にも留意したい.薬物の多くは肝,腎で濃縮〜代謝されるが,胎児・乳児の未熟な臓器では障害を受けやすく,不活化の代謝能力が弱いなどの可能性もあり2),個々の例でその薬剤のpharmaco-dynamicsを考えるという慎重な姿勢が欲しい.
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