特集 外科患者・薬物療法マニュアル
Ⅴ.併存疾患をもつ外科患者の薬物療法
24.前立腺肥大症
長谷川 史明
1
,
岩動 孝一郎
1
1大阪医科大学泌尿器科
pp.208-209
発行日 1992年10月30日
Published Date 1992/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900997
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前立腺肥大症は良性腫瘍であり,加齢とアンドロゲンの刺激によって前立腺の尿道周囲腺からなる内腺と呼ばれる部分が腫大してくることがその発生要因と考えられている.初期の症状としては頻尿や切迫性尿失禁などの刺激症状が主であるが,病期の進行とともに尿勢の低下や残尿の発生などの排尿困難を来すようになり,放置すれば尿閉から水腎症さらには腎不全を来す危険をはらんでいる.治療法は薬物療法を代表とする保存的療法と経尿道的前立腺切除術を代表とする手術療法に大別される.薬物療法では抗アンドロゲン剤,交感神経α1—遮断剤,および植物製剤などが使用されている.なお,排尿状態は膀胱の排尿筋圧と下部尿路の通過障害の程度に左右されるため,それらに影響を与える薬剤の使用に注意する必要がある.
一般に前立腺肥大症があっても一般外科手術に支障はないが,これによる下部尿路の通過障害のためにかなりの腎機能低下がみられる場合には,緊急手術でない限り,尿道留置カテーテルにて腎機能の改善を待って手術に臨むべきである.50歳以上の男性患者の場合,前立腺肥大症の合併は少なくなく,常に念頭に置くことが必要である.
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