特集 外科患者・薬物療法マニュアル
Ⅴ.併存疾患をもつ外科患者の薬物療法
17.肺塞栓症
伊藤 靖
1
,
金子 正光
1
,
東海林 哲郎
1
,
坂野 晶司
1
1札幌医科大学救急集中治療部
pp.188-190
発行日 1992年10月30日
Published Date 1992/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900990
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肺塞栓症は,その原因の90%以上を下肢・骨盤腔内の深在静脈血栓などの静脈血栓症を基盤とした疾患である.静脈血栓の形成には,血流停滞,静脈壁病変,血液凝固能亢進が基本的要因とされ,その臨床的危険因子としては,加齢,静脈血栓症の既往,長期臥床,悪性腫瘍,肥満,静脈瘤,うっ血性心不全や外科手術が挙げられている.
外科手術患者は,基礎疾患,合併する疾患・病態,術中の局所静脈壁への侵襲,カテーテル類の静脈壁への刺激または血栓付着,さらに術後の安静臥位など誘因が重なり静脈血栓が発生しやすい状態にある.巨塊肺塞栓症が発生した場合,約2/3の例では薬物療法の効果発揮前に死に至ると推定され,本症は予防的療法が重要である.術後静脈塞栓症・肺塞栓症のリスク別分類を表1に示し,以下にその薬物療法について述べる.
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