特集 外科患者・薬物療法マニュアル
Ⅱ.感染症の薬物療法
6.創感染
岩井 重富
1
1日本大学医学部第3外科
pp.62-63
発行日 1992年10月30日
Published Date 1992/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900939
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創感染には外傷によるものと手術によるものとがあるが,外傷による特殊な感染は他項目に入っており,本稿では手術後の創感染について述べる.外科手術は無菌手術,準無菌手術および汚染手術とに分けられる.無菌手術はともかく,準無菌手術,汚染手術では,術中あるいは術後に感染予防のために種々の抗菌剤が使用されており,これらの薬剤の存在のもとに感染症が発生し,その起炎菌と思われる種々の細菌が検出されている.使用薬剤によって検出菌種も異なるが,やはり,術中での術野細菌が最も関わりを有すると考えるべきであろう.術後創感染の起炎菌としてはP.aer-uginosaが最も多く関与しているが,近年,多剤耐性のMRSAが急速に増加している.また,これらの複数菌感染も多い.これに嫌気性菌も加わる場合もある.嫌気性グラム陰性桿菌,主としてBacteroides spp.の多くはβ-lactamase産生菌が多く,病巣内で多くのβ-lactam剤を不活化する可能性もある.したがって,術後創感染が発生した場合には,多くの化学療法剤のデータを準備して,起炎菌の推定,同定,感受性成績をもとに,薬剤の抗菌スペクトル,抗菌力,血中濃度など参考として必要十分な化学療法を行うべきである.
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