特集 術前・術後管理 '91
H.術後合併症の対策
f.肝・胆・膵・脾術後の合併症
化膿性肝膿瘍
松代 隆
1
,
小笠原 鉄郎
2
1東北労災病院外科
2東北労災病院内科
pp.308-309
発行日 1991年10月30日
Published Date 1991/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900661
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■問題点の解説■
肝臓は門脈,胆道などを通じてたえず消化管からの細菌感染の機会にさらされているが,通常は血流が豊富なことや細網内皮細胞系の貪食作用により感染から防禦されている.したがって,健常肝に肝膿瘍が発生することはきわめて稀である.しかし,なんらかの原因により肝の抵抗力が減弱したり,細菌感染が高度になると本症発生の危険性が増大するが,実際の臨床上はきわめて稀な疾患である.
本症の感染経路として,①経門脈性,②経肝動脈性,③経胆道性(上行感染),④隣接臓器よりの直接感染,⑤外傷性,⑥原因不明が考えられる.抗生物質が開発される以前は化膿性肝膿瘍の半数は経門脈性で,とくに虫垂炎に由来するものが代表的疾患とされていた.しかし,最近では胆道系疾患に由来するものと原因不明例がその大半を占めている.前者は多発性,後者は単発性のことが多い.
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