特集 術前・術後管理 '91
H.術後合併症の対策
f.肝・胆・膵・脾術後の合併症
膵空腸吻合の縫合不全
山内 英生
1
,
柿崎 健二
1
,
今村 幹雄
1
1国立仙台病院外科
pp.310-311
発行日 1991年10月30日
Published Date 1991/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900662
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■病因・病態■
高カロリー輸液などの全身管理により上部消化管手術時の死亡率は減少したが,膵頭十二指腸切除術時にみられる膵空腸吻合部の縫合不全は,現在でもなお致命的となり得る合併症である.膵液中の各種膵酵素はトリプシンによって活性化されるが,これに先立つトリプシノーゲンの活性化は膵液と十二指腸または上部空腸の粘膜より分泌されるエンテロキナーゼの混和により引き起こされるため,膵空腸吻合部では各種膵酵素が活性化された状態であり,いったん縫合不全が発生すると自己消化により重篤な合併症となる.この点で,膵液が活性化されていない単純膵瘻とは予後,対処法において大きく異なる.
膵空腸吻合部の縫合不全は造影検査などで証明されることは少なく,多くはドレーンなどからの排液により診断されることになる.この際,区別すべきものが膵液漏出であり,膵炎を併発したために,あるいは吻合部針穴などから漏出すると考えられるものである.この場合の膵液は非活性型であるものと考えられ,感染などを併発しない限り大事には至らない.アミラーゼは失活しにくく安定で,排液の濃度測定は容易にでき,純粋膵液では10万IU/lと高値であるため微量の混入でも検出でき,臨床上縫合不全の診断に実用できる検査である.
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