特集 術前・術後管理 '91
A.術前評価・準備・処置
抗生物質の予防的投与
中山 一誠
1
1日本大学医学部第3外科
pp.22-24
発行日 1991年10月30日
Published Date 1991/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900543
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■感染予防について■
感染予防Chemoprophylaxisの定義について書かれた文献あるいは書物はない.DorlandのMedical DictionaryによるとPrimaryとSecon-daryに分類される.すなわち,一次的感染予防とは「個体が感染する以前に感染を防御するための手段として化学療法剤を使用する」と説明されており,二次的感染予防とは「すでに感染症が発症している患者に対して,他の感染症の合併を予防するために使用する」とある.このような説明からすると,外科手術における予防投与は,無菌手術,準無菌手術は一次的感染予防の範疇に入り,汚染手術に関しては,治療と同時に既存の感染病巣より波及する合併症を予防する意味により二次的感染予防ということになる.したがって,感染予防に関しては,予防であるか,あるいは治療と予防の両者であるのか,よく理解して化学療法を行う必要がある.
しかし,実際面においては,感染予防の問題点として,どの時期に,どの系統の薬剤をどのくらい,何日間投与すればよいか,などの方法論が未だ確立されていない.言い換えれば,感染予防学が学問的体系をなしていない点に,今日のごときMRSAや多剤耐性緑膿菌の問題が生じた一因がある(表1,2).
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