一般外科医のための形成外科手技・13
大網を用いた再建術
波利井 清紀
1
Kiyonori HARII
1
1東京大学医学部形成外科
pp.91-95
発行日 1990年1月20日
Published Date 1990/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407900014
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はじめに
大網は血管とリンパ管を豊富に含んだ脂肪性の臓器であり,感染に対する抵抗力があるので知られている.大網を使った外科領域の再建術には,肝硬変に由来する腹水の治療として行われたDrummond手術や虚血心筋に対するcardio-omentopexyなどが古くより報告されており,血管やリンパ管の再生に対する大網の特殊な性質が認められていた.
1960年代よりはGoldsmithらが有茎大網移行術による慢性リンパ浮腫の治療,人工血管の保護,胸腔内食道吻合部の保護などを,Castenらが下腿血行再建を相次いで報告1〜3),Vinebergが遊離大網移植による虚血心筋の血行改善を認めている4).しかし,大網をいわゆる形成外科的な再建術に用いたのはKiricutaらで,放射線壊死部の治療,難治性瘻孔の閉鎖,頸部食道再建,乳房再建など多方面に行われている5).また,マイクロサージャリー導入後は,大網を血管柄付遊離移植として自由に移植するようになり,皮弁の代用としてのほか,陥凹部の修正,慢性骨髄炎の治療などにも用いられている6,7).大網は腹部一般外科医が常日頃親しんでいるものであるが,比較的軽んじられるためかその血行形態にもあまり注意が払われていないようである.しかし,大網をうまく利用すれば困難な再建手術も簡単に行えることがあり,大網を使った再建術を知っておくと便利である.
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