腹壁ヘルニア修復術道場・2
腹壁瘢痕ヘルニア手術について知るべき一般的事項—緊急度と術前最適化,複雑ヘルニアの定義,記録すべき最低限の情報
嶋田 元
1,2
,
松原 猛人
1,2
Gen SHIMADA
1,2
,
Taketo MATSUBARA
1,2
1聖路加国際病院ヘルニアセンター
2聖路加国際病院消化器・一般外科
キーワード:
複雑性腹壁瘢痕ヘルニア
,
術前最適化
,
ミニマルデータセット
Keyword:
複雑性腹壁瘢痕ヘルニア
,
術前最適化
,
ミニマルデータセット
pp.812-817
発行日 2024年7月20日
Published Date 2024/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407214591
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はじめに
腹壁瘢痕ヘルニアは腹部手術の合併症の一つであり,腹部手術切開創をもつ患者のおよそ10〜15%に発生する1).正中切開創で最も発生頻度が高いが,横切開,傍正中切開,ポートサイトなどあらゆる腹部切開創に発生する.
腹壁の機能は体幹動作だけでなく,呼吸,排尿,排便,咳嗽に大きくかかわっている.よって腹壁瘢痕ヘルニアの主症状は,腹部手術創の膨隆や痛み,腹壁の機能障害に起因する症状である.時に急性嵌頓や絞扼,皮膚壊死などにより緊急手術が必要になる場合もある.切開創に発生するため,どの部位にでも発生しヘルニア門のサイズや症状も千差万別である.このため単一術式のみですべての腹壁瘢痕ヘルニアに対応することは困難である.
腹壁瘢痕ヘルニアの治療目的は,症状の改善による生活の質の向上と緊急手術の回避であり,診療ガイドライン2)ではヘルニア門の縫合閉鎖とメッシュによる補強を強く推奨している.
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