同心円状モデルで読み解く 新しい食道外科解剖・11【最終回】
噴門部・腹腔動脈周囲—腸間膜の基部とは
藤原 尚志
1
Hisashi FUJIWARA
1
1東京医科歯科大学消化管外科学分野
pp.87-97
発行日 2024年1月20日
Published Date 2024/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407214417
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Introduction
これまで同心円状モデルに基づいて頸部・縦隔の外科解剖を論じてきたが,これは人体が一連のものである以上,当然ながら腹部や骨盤にも適用可能な解剖モデルであると考えている.腹部領域は,現代の筋膜構造に基づいた微細外科解剖が最も早く発達した領域であり,その中心は兵庫医科大学・篠原尚先生の著書『イラストレイテッド外科手術』において広く知られることとなった,胎生期における中腸回転に基づく層構造であることは言うまでもない.
しかし,すでに論じ尽くされているかに思えた腹部領域も,いまだに胃間膜・腸間膜と後腹膜の関係性については一定の見解が得られておらず,議論の余地があるようである.具体的には,癒合筋膜,腎前筋膜,膵後筋膜などの言葉がどこからどこまでの何を指し示すのか,腎前筋膜は腸間膜側に折れ返るのかどうか,などの点である.これらの問題に対する同心円状モデルによる合理的解決が,「腸間膜の基部」と呼んでいる,人体の外科解剖では遍く見られる間隙Space(筋膜構造)の途絶である.これがどこに生じるのかを明確に意識することで,腸間膜と後腹膜との正しい関係性が見えてくる.
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