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はじめに
カプセル内視鏡(capsule endoscopy:CE)は,飲み込むだけで消化管を自動で撮影する,低侵襲に消化管観察可能な診断機器であり,2000年に初めてIddanら1)が報告して以降急速に発展してきた.本邦では,2007年10月に小腸CEが原因不明の消化管出血(obscure gastrointestinal bleeding:OGIB.上部消化管内視鏡検査と大腸内視鏡検査で出血源を同定できない消化管出血)に対して保険収載された.2012年7月にはパテンシーカプセルが保険収載され,事前の消化管開通性検査を行うことが可能となり,小腸CEは「小腸疾患が既知または疑われる患者」に保険適用拡大され,実臨床において幅広く使用されている.
さらに,2014年1月には大腸内視鏡検査が困難な症例に対し大腸CEが保険収載され,2020年4月にはコントロール不良の高血圧患者や,慢性閉塞性肺疾患,心不全患者などの合併症により,通常の大腸内視鏡を施行することが困難な患者に対しても保険適用拡大された.しかし,大腸CEは,前処置の内服量が多いことやコストが比較的高額であることなど課題も存在している.一方で,通常大腸内視鏡検査と比べて,スコープ挿入に伴う苦痛や羞恥心,送気に伴う膨満感が少なく低侵襲で行うことができる大腸癌の有用なスクリーニング検査の選択肢の1つであり,さらなる普及が期待されるところである.
読影医の立場に立ってみると,小腸および大腸CEは,ともに膨大な数の画像を読影しなければならず,常に病変見逃しのリスクも伴い読影の負担が大きい検査である.さらに,読影に精通した人員も圧倒的に少ないのが現状であり,人員不足のなかでさらに読影医の負担を増やしている.このような状況下,読影医の負担,病変見逃しのリスクの低減を目的に,近年CE読影の人工知能(artificial intelligence:AI)の開発が進められている.本稿では,本邦におけるCE診断に関するAIの現況について解説する.
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