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縫合糸やデバイスの選択とその理由
狭窄形成術は,クローン病の小腸病変に対し適応となる.クローン病は再発,再燃を繰り返す良性疾患であることから,小腸病変に対して腸管切除をそのたびに繰り返し行うと短腸症候群に至る可能性がある.狭窄病変に対して腸管を犠牲にせず狭窄を解除する手法として狭窄形成術の有効性が示され,必ずしも腸管切除の必要がないことが示された1,2).また,バイパス手術は,早期の再発率が高率であることや癌発生リスクなどから,選択されることはほとんどなくなっている.狭窄形成術の施行に際し,外科的に考慮すべき選択肢としては,腸管部分切除術か狭窄形成術か,狭窄形成術であればどのような手法を用いるか,縫合の方法は,縫合に使用する縫合糸は,などが挙げられる.
狭窄形成術は,穿孔,膿瘍,瘻孔,急性炎症(蜂窩織炎)の合併のない線維性の狭窄が適応となり,狭窄の分布,長さにより様々な術式が提唱されている(後述)3).狭窄程度に関しては,内径25 mm以下の狭窄や,術中に用手的に確認し示指が通過しえない狭窄を狭窄形成術の適応とすることが多い1,4).その際の縫合方法,縫合糸に関しては,特別な条件はなく,施設や外科医の慣れや好みに応じた通常の小腸吻合と同様の選択がなされており,その理論的背景などに関しては本特集1章「縫合糸・針付き縫合糸・縫合材料の種類と使い分け」の項を参照いただきたい3,5).具体的には,当科では基本的には4-0モノフィラメント吸収糸を用いてGambee縫合を行っているが,組織が硬く結紮に際し裂けやすい場合には,よりしなやかで組織を切ることの少ない3-0マルチフィラメント吸収糸を選択する場合もある.そのほかの手法としては,Albert-Lembert縫合,層々縫合が行われている3,5).縫合糸に関しても文献での記載は少ないが,吸収性の糸はもちろん非吸収性の絹糸も用いられている.避けるべき縫合方法や縫合糸は示されておらず,縫合不全や狭窄をきたさないように,慣れた縫合糸や手技で施行することが必要である.
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