増刊号 早わかり縫合・吻合のすべて
3章 損傷・外傷に役立つ縫合
婦人科臓器(腟)の縫合
大島 乃里子
1
,
若菜 公雄
2
,
宮坂 尚幸
1
Noriko OSHIMA
1
1東京医科歯科大学生殖機能協関学
2東京医科歯科大学周産・女性診療科
キーワード:
腟断端縫合
,
子宮全摘
,
腟壁合併切除
Keyword:
腟断端縫合
,
子宮全摘
,
腟壁合併切除
pp.90-94
発行日 2020年10月22日
Published Date 2020/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407213120
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どんな縫合・吻合が必要になるか
手術においては,根治性と安全性に加え,術後の患者のQOLを考える必要がある.腟壁の縫合では,原疾患の十分な切除範囲をとること,止血が十分で術後離開がないこと,周辺臓器の損傷を避けることが重要である.また,術後の性機能を保つことにも注意する必要がある.
切断位置については原疾患との関係によるため,症例によって異なるが,子宮体部までの切除のみですむ場合も子宮は全摘とし,子宮頸部を取り残さないようにすることが望ましい.過去には婦人科疾患での手術においても,子宮頸部を残して体部のみを切断する子宮腟上部切断術が行われていたが,近年は手術機器の進化と手術技術の向上により,子宮体部と頸部の両方を摘出する子宮全摘術を行うことが一般的になっている.子宮腟上部切断術は,尿管・膀胱処理が不要なため手術手技が簡便で,周辺臓器の損傷リスクが減るというメリットがあるが,頸部を残すことにより子宮頸癌の発生母地が残存すること,切除部位によっては帯下の増量や,閉経前の症例においては月経様出血が起こることがあるためQOLが低下するというデメリットがある.
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