FOCUS
治療判断に迷う転移のあるMEN1型P-NETの治療
工藤 篤
1
,
伴 大輔
1
,
田邉 稔
1
Atsushi KUDO
1
1東京医科歯科大学肝胆膵外科学分野
pp.868-874
発行日 2017年7月20日
Published Date 2017/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407211679
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はじめに
神経内分泌腫瘍(NET)と聞くと,比較的進行の遅い,予後の良いおとなしい腫瘍というイメージを抱きがちであるが,2007年の膵NET全国集計1)を振り返ってみると非常に重要なことに気づく.5年生存率は日本膵癌取扱い規約(JPS)のステージIが95%だが,Stage Ⅳaは57.7%,Stage Ⅳbは39.4%と非常に低い.しかもStage Ⅳbは全登録症例の36%を占め,Ⅳbまで進行するケースが少ないというわけでもない.さらに重要な問題は,罹患年齢のピークが50代であるという点である.つまり,P-NETは若く発症し,約4割は5年生存率が40%ということになる.また,本疾患特有の問題は,機能性腫瘍のホルモン症状のコントロールである.例えば,インスリノーマの多発肝転移では通常の末期管理に加えて,低血糖に伴う意識障害のコントロールが加わる.VIP産生腫瘍(VIPoma)の進行例では1日7 Lを超える50回の下痢を制御する必要があり,ここまで進行する前にどのような対応を行うべきか,しばしば反省させられる.さらにMEN1型,Von Hippel-Lindau(VHL)病といった遺伝性疾患に伴うP-NETの治療においては,他臓器の発癌やホルモン症状管理を考慮し,P-NET治療の優先順位を考えなければならない2).本稿では,治療判断に迷うMEN1型症例を中心に,転移のあるNETの診断と治療を考察したい.
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