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はじめに
C型肝炎ウイルスに感染すると,約70〜90%と高率に慢性化し,10年単位の経過で肝線維化が進行し,やがては肝硬変さらには肝癌へと進展する.C型肝炎ウイルス感染症に対する治療は比較的早期から開始された.1989年にC型肝炎ウイルスが同定された後,1992年にはインターフェロンの単独療法(24週間投与)が承認されたが,C型肝炎ウイルスが体内から駆除できる確率〔sustained virological response(SVR)rate〕はよく見積もっても30%程度と,とても満足のいくものではなかった.しかしこの頃は,C型肝炎ウイルスのタイプもウイルス量も測定することができなかったのである.後に,日本人に多いgenotype 1型の高ウイルス量症例が難治性すなわちインターフェロン治療抵抗性ということが解明されたのである.
その後,時代はペグインターフェロン(Peg-IFN)・リバビリン(RBV)併用療法へと移行した.週1回投与のPeg-IFNと経口薬であるRBVを併用することにより,治療効果は上昇したが,それでもgenotype 1型高ウイルス量の難治性症例ではSVR率が50%程度と満足のいく数字ではなかった.しかし,この50%という治療成績から様々なSVRに寄与する因子が発見された.その一つは,本邦1)と欧米2)でほぼ同時に報告されたインターロイキン28(IL-28)の遺伝子多型である.すなわち,rs8099917がメジャーアレルであるTTをもつ患者はPeg-IFN+RBV治療によるSVR率が有意に高いことが判明したのである.したがって,ある程度の治療効果が予測できることから,副作用の大きいこのPeg-IFN+RBV治療を回避できる症例が選択できたのである.
その後,2012年より直接作用型抗ウイルス薬(direct acting antivirals:DAAs)であるテラプレビル(TPV)が承認されて,時代はDAAs併用Peg-IFN+RBV療法,さらにはDAAsを複数組み合わせたインターフェロンフリー(IFN free)治療に移行し,現在までに複数の治療の選択肢の中から最適な組み合わせを選べるようになった.そして,何よりメリットだったことは,今まで使用していたIFNの副作用から解放されたことである.さらに,このIFN free治療は副作用が少ない点に加えて,C型慢性肝炎のみならず,代償性肝硬変にも適応があることは朗報である(本邦では,IFN free治療は非代償性肝硬変患者には適応となっていない).
DAAsはそのターゲットからNS3/4Aプロテアーゼ阻害薬,NS5A阻害薬,NS5Bポリメラーゼ阻害薬に分類される(図1).単独の投与では,薬剤耐性ウイルスが生じSVRに至らないことがあるため,Peg-IFN+RBV治療と組み合わせて,あるいは複数のDAAsを組み合わせて使用するIFN free治療として使用する.今回は紙面の都合上,IFN free治療に限定して説明したい.DAAsはその特異性からgenotype(本邦では保険適用はserotype)に応じて治療法が異なっている.以下に,本邦でおもに存在するgenotype 1とgenotype 2に分けて,その治療法を説明する.
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