Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
外科的がん切除術,化学療法,放射線治療など,現行の標準的ながん治療法が発達していない時代は,がんを発症した患者を助けることはできず,がん患者を治療後にfollow upする考え方は存在しませんでした.また,現在では当たり前のように知られている酒,タバコ,ピロリ菌,放射線,遺伝性素因など発がんに関与する因子に対しても,昔は十分に注意を払うことはできず,発がんの高リスク患者を対象にしたスクリーニングは行われていませんでした.しかし,その後の疫学的知見の蓄積,がん診断検査技術の進歩,外科的切除術の確立,患者管理体制の改善などにより,たとえがんを発症しても早期に発見され,治療により長期生存し,その経過観察中に他臓器に別のがんが発見される症例も少なからず存在するようになってきました.そのため,治療と同様に重要なのが,今回注目した詳細な術前検査による重複がん,併存合併症の発見と,適切な術後follow upプログラムの実施による再発病変への早期治療と考えています.
術前検査は言うまでもなく,適切な治療を行うために必須の検査であり,がん原発巣の進行度や遠隔臓器への転移の存在などを正確に診断することは,患者それぞれに対する適切な治療法,治療戦略の実施につながります.この際に特に注意を払うべきは重複がんの存在です.ご存知のように一部のがんは別臓器のがんと併存することが稀ではなく,特に気管支・肺・上部消化管領域に頻発する重複がんは,領域性発がん(field carcinogenesis)と呼ばれる,細胞レベルだけではなく領域性の発がんメカニズムも提唱されています.また,遺伝的な重複がんの発見には採血検査,画像検査だけでなく,近年発達の著しい遺伝子検査を適切に運用することも非常に重要な問題です.
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.