特集 岡山県の公衆衛生活動
大学と行政との相互批判—今後のあり方をもとめて
実成 文彦
1
,
和気 健三
2,3
,
橋本 真紀
4
1岡山大学医学部公衆衛生学教室
2高知県窪川保健所
3前岡山県高梁・総社保健所
4水岡協同病院南診療所
pp.412-419
発行日 1971年7月15日
Published Date 1971/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204291
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健康のシステムの一環としての大学と行政
大学でウイルスの疫学などを扱う一方保健所では循環器検診などに走り回っているというように大学と行政の間を往来している私に,大学と行政の相互批判を通して今後のあり方を求めよとのことである.公衆衛生に入って日が浅く過去および現在を充分に把握し得ない私にとっては難問である.さらに困難な理由は最近の社会変動の激しいことである.そこで大学にとっても行政にとっても共通の目的は住民の健康であるはずだとの認識に立って考えを進めていきたい.
現在,包括医療の必要性が説かれ,また環境保全が急務となっている例をみてもわかるように,今後は人間が人間としてより快適に生きるようにみんなの健康生活の保障と建設のためのシステムの完成と円滑な活動が公衆衛生活動の目指すべきところではないかと思われる.健康問題の解決には個人レベルから国家レベルのものまであることに対応して,このシステムには個人から国家までの全員参加が必要とされ,基本的単位としては公衆衛生と医療との合体した場であるところの地域社会ということになろう.このシステムがシステムとして円滑な活動を行なうには計画から評価,追跡までしうるところの情報網と制御機構および各種の実施機関を持たねばならない.機能的には各人の健康生活の向上をもたらすこと,および公衆衛生の使命としてより先見的であるようなものでなければならない.
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