増刊号 消化器・一般外科手術のPearls&Tips—ワンランク上の手術を達成する技と知恵
①食道
胸腔鏡下腹臥位食道癌手術
小澤 壯治
1
,
小熊 潤也
1
,
数野 曉人
1
,
山碕 康
1
,
二宮 大和
1
,
谷田部 健太郎
1
Soji OZAWA
1
1東海大学医学部消化器外科
pp.29-33
発行日 2015年10月22日
Published Date 2015/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210926
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食道癌の内視鏡手術は体壁破壊を最小にして手術侵襲の軽減を期待する手術であり,1992年にCuschieriら1)が最初に報告して以来,世界中に普及した.日本胸部外科学会の学術調査によると,内視鏡手術の割合は年々増加し,2012年には表在癌49%,進行癌28%,全体では33%にまでなった2).患者体位は1990年代には左側臥位が主流であった.手術手順の観点から,開胸手術からの移行が容易で,小開胸も併用することにより鉗子や器具の動作制限を少しでも軽減し,また緊急時に通常開胸操作に移行しやすいなどの利点があった.しかし,2006年にPalaniveluら3)が腹臥位手術を報告すると,わが国でも徐々に腹臥位を採用する施設が増加した.体位と気胸併用のため,術中の出血や滲出液が手術野である後縦隔に貯留しにくく,また鉗子などによる肺の圧排操作が不要であり,さらに術者は脇を開けずに両腕を保持したまま手術操作が可能,すなわち術者にとって人間工学的に優れた体位であるなどが利点である.
当教室では2009年9月〜2015年5月に200症例以上に本手術を施行してきた.手術適応は,概念として腫瘍学的リスクが低いこと,外科的リスクが低いことを考慮し,胸腔鏡下手術では胸膜癒着が高度でない症例,深達度T1b〜T3の症例,術前化学放射線療法(50 Gy以上)を受けていない症例としている.本稿では,東海大学式の腹臥位胸腔鏡下食道癌手術の手技について解説する.
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