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本特集“消化器・一般外科手術のPearls & Tips—ワンランク上の手術を達成するための技と知恵”では,外科専門医研修をほぼ終え,外科専門医取得後のセカンドステップの外科医に向けて,ワンステップ上のレベルの消化器および一般外科手術を手際よく巧くこなすための手術のコツを,その道のエクスパート達にわかりやすく解説してもらっている.外科手術というのは手術術式が同じでも,その難易度は症例によりまったく異なってくることは,本特集を手にしている外科医の先生方はすでによくご承知のことと思う.また,同一の手術術式をいくらこなしても,自分自身では無難に手術を行うことができたと思っていても,まだまだその先にはより質の高い外科手術があるものである.本特集では各術式において,自分自身が何とかこなしうると思っている一歩先の困難な症例に対してどのような戦略で立ち向かっていけばよいか,そのポイントと手技上の秘訣について,多数の困難例を経験し尽くしたエクスパートらが真の要点を見事に明快に述べてくれている.外科手術を研修し始めた頃には見えてこなかった外科手術を行う際のポイントが,まさに“目からうろこが落ちる”ように解説されていることに読者は気づくであろう.もしここに述べられている“Pearls & Tips”の意味が十分理解されないようであれば,その読者はまだこのセカンドステップ以前の修練が十分でないと言えよう.
外科手術において困難な,あるいは手技的に難解な症例に遭遇するということは,若い外科医にとって良い意味での試金石であり,その困難性,難解性のもつところを十分認識することで,外科医としてさらなるステップアップができるものである.また,術前にこれから行う手術の難易度を十分予測していくことで,その手術経験がさらに活きてくるのである.そこには外科手術の知恵が蓄えられていくものであり,その知恵が多ければ多いほど,外科医としての真の能力がグレードアップし,成長していくものである.質の高い外科手術を行うためには単なる技量,いわゆるskill-upをめざすだけではだめであり,さまざまな症例ごとにバリエーションの多い実臨床では,skillとともに術前・術中・術後を含め,外科医としての的確かつ精緻な判断を行いうるための知識と知恵が必要となってくるのである.
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