文献抄録
上肢深部静脈血栓症は見直されるべきである
新見 正則
1
1慶應義塾大学医学部外科
pp.1202
発行日 1989年9月20日
Published Date 1989/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210447
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上肢の深部静脈血栓症は過去に比べてより一般的なものとなってきている.上肢はその解剖学的特徴により静水圧が低く,血栓の原因となる弁が少なく,安静にされる機会が少なく,血流が早く,内皮細胞の線溶作用が増加していることなどにより深部静脈血栓症は比較的少ないと説明されていた.しかしながら,鎖骨下静脈にカニュレーションする機会が増加している今日では血栓形成の頻度も増加している.今回,著者らはAkron General Medical Centerにて1980年より1986年までの6年間に経験した深部静脈血栓症804例について調べた,そのうち上肢に生じたものは33例で約4%であった.患者は20歳より87歳で平均年齢は53歳で,男性が45%であった.診断は23例が静脈造影によって,各1例がCT scanとDoppler scanによって,他の8例は臨床症状より下された.33例の原因はカテーテルによるものが13例,過剰運動が2例,解剖学的異常が2例,悪性腫瘍が8例,心不全が1例,凝固異常が2例,外傷が2例,特発性が2例であった.カテーテルが原因の13例のうち6例は悪性腫瘍を伴っていた.カテーテルは多孔性で径の太いものを長期間留置した例に多く発生していた.上肢の深部静脈血栓症のうち12%に肺梗塞の合併が換気血流シンチで確認された.それによる死亡例は著者らの施設ではない.
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