文献抄録
腫瘤を触知しない乳癌の意義とステージ分類
内海 俊明
1
1慶大外科
pp.1655
発行日 1988年10月20日
Published Date 1988/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210199
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現在用いられている乳癌のステージ分類にはマンモグラフィー所見のみで発見される乳癌についての正確な定義は含まれていない.われわれは腫瘤を触知しない乳癌をいかに分類し従来の方法で発見された乳癌と区別する必要があるかを決定することを目的として,腫瘤を触知しない,女性乳腺疾患1,059例に施行した1,132回の組織検査について,悪性疾患,腋窩リンパ節転移の頻度および多発性を検討した.1,132例の生検例の中で29.1%(330例)は悪性病変であり,190例が浸潤性乳管癌,13例が浸潤性小葉癌,81例が非浸潤性乳管癌,25例が微小浸潤性乳管癌,20例が非浸潤性小葉癌,1例が悪性カルチノイドであった.非浸潤癌と微小浸潤癌ではいずれも腋窩リンパ節転移をみとめなかった.しかし,腋窩リンパ節郭清を施行した167例の浸潤性乳管癌,浸潤性小葉癌の中で,32.9%に少なくとも1個の腋窩リンパ節転移をみとめた.集簇する石灰化を有する浸潤癌と腫瘤を触知しない乳癌の腋窩リンパ節転移の可能性は同等であった.
このように臨床的潜在癌の腋窩リンパ節転移の頻度が高いので,腫瘍の大きさにかかわらず浸潤癌に"微小"という言葉を用いるには問題がある.非浸潤性乳管癌と微小浸潤性乳管癌は"微小"とすべきだが,触診所見にかかわらず,浸潤癌はマンモグラフィー上の大きさによりステージ分類がなされるべきと思われる.
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