文献抄録
直腸癌に対する術前照射療法の遠隔成績とその合併症
桜井 洋一
1
1慶応義塾大学医学部外科
pp.1161
発行日 1988年7月20日
Published Date 1988/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407210121
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近年,直腸癌の治療における補助的放射線療法の有効性についての報告がなされてきている.1985年に,われわれは,術前放射線療法が,生存率の向上と健存期間の延長をもたらすことを報告した.今回の報告では,それらの症例をさらに4年間追跡し,その有効性につき検討した.
1972〜1979年までの問に,Baystate Medical Cen-terにおいて,直腸癌と診断された症例149例を対象とした,直腸癌の部位はいずれも腹膜反転部まで,あるいは肛門縁より20cmまでのものであり,組織型は腺癌であった.これらの症例のうち,外科的切除の前に4,000〜4,500radの術前補助放射線療法を行った40例と,外科的切除のみを行ったコントロール群109例につき,生存期間,健存期間,再発部位,また,長期的にみた合併症につき,これらの2群をretrospec-tiveに比較検討した.術前照射群40例のうち,19例(48%)に前方切除,そのうち16例(84%)は人工肛門を造設,21例(52%)に腹会陰式直腸切断術が施行された.一方,コントロール群109例のうち,46例(65%)に前方切除,そのうち30例(65%)に人工肛門造設,67例(58%)に腹会陰式直腸切断術が施行された.2群間に年齢などの背景因子に有意差は認めなかったが,病期では術前照射の効果のためか照射群で軽度に良好な傾向がみられた.
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