My Operation—私のノウ・ハウ
虫垂切除術
浅野 哲
1
1国立病院医療センター外科
pp.1555-1558
発行日 1985年11月20日
Published Date 1985/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407209182
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
適応と手術
急性虫垂炎は発生頻度が高い急性疾患であり,虫垂切除術が治療手段となる.本術式は外科医の初歩の手術手技とされ研修医などの若手の修練の対象となることが多い.しかしその正確な診断と治療は必ずしも容易ではなく,熟練した外科医も難渋することがある.
診断においては絶対的根拠となる臨床所見と検査方法はない.典型例では比較的容易であるが,小児や高齢者にしばしば見られる非典型例ではかなり困難であり,多くの疾患と鑑別しなければならない.急性胃腸炎,急性回腸末端炎,右結腸憩室炎,メッケル憩室炎,尿管結石,女性では子宮附属器炎,子宮外妊娠,小児では腸間膜リンパ節炎,高齢者では結腸癌などを検討し,それぞれを除外しながらいずれも相当しない場合を急性虫垂炎とする除外診断法を用いる.手術適応においては,過去では腹膜炎を合併しやすい危険度を考慮するために,右下腹部痛を訴える患者に急性炎症所見が乏しいにもかかわらず不必要な虫垂切除術が行われた傾向が見られた.しかし現在では軽症には抗生剤により治療しうるし,重症には術中術後の管理により適切に処置しうる.また虫垂切除術後の腸瘻形成,癒着イレウスなどの合併症を無視できないので,手術適応が巌しく検討されるようになつた.
Copyright © 1985, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.