My Operation—私のノウ・ハウ
脾摘除術
梅山 馨
1
1大阪市立大学医学部第1外科
pp.1383-1388
発行日 1985年10月20日
Published Date 1985/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407209151
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適応と手術
脾の生理ことに脾の免疫能についてはいまだ解明されていないこともあつて,脾摘術の適応がすべて明確となつたわけではない.しかし一般には以下のものが適応とされている.第1に脾原発の腫瘍,嚢腫,膿瘍のほか脾動脈瘤,脾破裂(外傷)である.ただ限局した小さい腫瘍や脾外傷については最近,脾温存の立場から部分的あるいは分節的脾摘術が行われることもある.第2には脾自身が原因で起こる原発性脾機能亢進症で,先天性溶血性貧血ことに遺伝性球状赤血球症,特発性自己免疫性溶血性貧血(AIHA),特発性血小板減少性紫斑病(ITP)ならびに脾性好中球減少症であり,特発性門脈圧亢進症(Banti症候群)もこれに属せしめる人もある.第3には続発性脾機能亢進症をもたらすマラリヤ,サルコイドーシス,Gaucher病,Felty症候群,日本住血吸虫症,慢性骨髄性白血病,巨脾性肝硬変症などである.第4にはホジキン病を中心とした悪性リンパ腫の病期分類のための診断的開腹術兼脾摘術である.
そのほか食道静脈瘤に対する直達手術に際して,脾機能亢進症状の改善,門脈圧下降のほか短胃静脈系血行郭清の目的で,また胃上部進行癌での脾動脈,脾門部リンパ節郭清による根治性向上の目的で脾摘合併が広く行われている.しかし,最近は脾の免疫能を温存する立場から脾摘合併を否定する報告も一部にある.また同種腎移植時の免疫抑制を目的とした脾摘の適応も一定の見解なく今後に問題を残している.
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