特集 〔Q & A〕術中トラブル対処法—私はこうしている
心臓手術
動脈管開存症PDA剥離の際,肋間動脈を損傷した
新井 達太
1
1東京慈恵会医科大学心臓外科
pp.859
発行日 1984年6月20日
Published Date 1984/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407208720
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PDAそのものの剥離の際は肋間動脈を損傷することはないが,PDAより末梢の胸部大動脈を剥離の際損傷することがある.PDAの手術時の体位は手術台に対し約80度の側臥位とし,後側方開胸で入るので,PDAは視野の真下になる.この位置での肋間動脈は胸部大動脈の側方と裏側より出ており,多少見にくい.胸部下行大動脈の真上で胸膜を大動脈に沿つて上下に縦切開し,胸膜を側方に引つ張りながら大動脈を剥離するが,大動脈の側方,裏側を彎曲鉗子か彎曲した鋏を開閉して鈍的に剥離する.結合組織を一遍に剥離しようとすると肋間動脈を傷つけることがあるので,少しずつ剥離する.剥離できず多少抵抗のある所に血管があることが多いので抵抗があつたら血管があると考え慎重に剥離し血管を見つけるか,結合組織を一緒に結紮する.肋間動脈は左右対をなしている点もはじめから念頭におく.
もし,損傷し出血したら手術操作を中止して,出血部位をガーゼで圧迫止血する.出血がガーゼににじむ程度に押え,数分は我慢して,1枚のガーゼでしつかり押える.ゆつくりガーゼをはがすと出血はかなり少なくなつており,肋間動脈の一部を損傷したのか,切断したのかなど出血点が明瞭になる.ナイロン糸又はプロリン糸で大動脈側よりの出血部位にU字又はZ縫合をかけ結紮止血する.切断した肋間動脈末梢側からの出血も縫合止血する.
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