Japanese
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診療指針
動脈管開存症
Patent Ductus Arterisus
福慶 逸郎
1
Fukukei Itsuro
1
1名古屋大学第一外科教室
11st Surgical Department, School of Medicine, Nagoya University
pp.401-412
発行日 1962年6月15日
Published Date 1962/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201100
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I.緒言
動脈管開存症は診断が容易で,手術の危険性が少なく,手術により完全に治癒しうる疾患である。大動脈弓の左鎖骨下動脈分岐部の未梢と左右肺動脈分岐部との間の交通路である動脈管は卵円孔とともに胎生期の生理的短絡である。右心房へ流入する血液の一部が右心室を通り肺動脈へ送り出されるが,膨張していない肺は多くの血液を必要とせず,且血管抵抗のため肺動脈圧が高いので,これより圧が低い下行大動脈へ血液が流れる,すなわち右→左短絡路としての機能を営んでいる。出生後肺の膨張により血管抵抗が減少し肺動脈圧が低下して肺動脈との圧差が殆んどなくなる。右心室からの血液は大部分肺を通り左心房へ還りその内圧を上昇させ卵円孔を閉鎖させる。この結果左心室からの拍出量が増加し大動脈圧が上昇し,漸次大動脈圧が肺動脈圧を凌駕する。出生直後に両動脈間の圧差が少ないことと動脈管が大動脈に対し鋭角をなしていることで,動脈管中の血流が急速に減少ないし停止する。Barcleyらによれば出生後2〜3分で動脈管は機能的に閉鎖するといわれるが,Adams and Lindのカテーテルによる研究では出生後数日間可なりの血流が存在するといわれる。いずれにせよ機能的閉鎖が相当早期に生ずる。しかし解剖学的閉鎖はさらに時間を要し,Christieによれば2週後に65%,8週後に12%,1年後に1.2%がなお開存しているといわれる。
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