特集 〔Q & A〕術中トラブル対処法—私はこうしている
肝臓手術
Short hepatic veinをひつこ抜いた
山崎 晋
1
1国立がんセンター外科
pp.799
発行日 1984年6月20日
Published Date 1984/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407208685
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短肝静脈(Short hepatic vein,SHV)とは,右肝静脈・中肝静脈・左肝静脈などの主要肝静脈の下大静脈合流部より尾側の肝部下大静脈へ,肝右葉後区域及び尾状葉から,短い首(通常5mm以下)しか持たずに流入する肝静脈で,多くの場合7〜8本見掛けられる.主要肝静脈が先天的に細かったり,癌などの病変に圧迫されて閉塞している時には,代償的に太くなつていることもあるが,多くは径3mm以下と細い.しかしこれが引きちぎられると,下大静脈から直接出血し,概して視野が悪く止血に難渋しかねない.あわててペアン鉗子などで直接下大静脈壁をつまむようなことはしてはならない.低圧系の出血であるのでとりあえずは,指で小孔をふさげば止血できる.その間にオキシセル綿や,スポンゼルなどを用意し,これらを使つて圧迫止血する.下大静脈管腔をつぶさない程度の柔らかい圧力がよい.肝側からもかなり逆流・出血するのでこちらも圧迫するか,可能ならば出血点を中心におおきめのZ縫合をかける.こうして一時的に出血をコントロールしておいて,本格的修復の段取りをする.まず術野の改善を試みる.皮膚切開を延長・拡大する.損傷したSHVに隣接する数本のSHVを確実に切断・処理し,裸地域の剥離・右副腎の剥離を併せて行い,肝右葉の可動性を大きくする.またこの間に各種血管鉗子,血管縫合糸など修復作業に必要な用具を揃える.
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