特集 〔Q & A〕術中トラブル対処法—私はこうしている
肝臓手術
肝門で肝内胆管と空腸が吻合できない
山崎 晋
1
1国立がんセンター外科
pp.800-802
発行日 1984年6月20日
Published Date 1984/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407208686
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設問の意味する状況は肝門部癌で胆管を切除したとき,胆管の切断端が肝実質ギリギリのところになつたり,肝内へ引込んでしまつて,「縫いしろ」がなくなってしまつた場合を想定していると思われる.この場合は肝切除を加えれば容易に解決する.左葉の内側区域を正確に系統的に切除すれば,右葉では4個の亜区域枝(S8:右前下区,S6右後下区,S7右後上区,S8右前上区)が束になつて右葉断面に露出するし,左葉ではS2上外側区とS3下外側区の亜区域枝が見える.即ち正確な内側区域(S4)切除により,肝内胆管の3次分枝と空腸との吻合が可能である.一次分枝との吻合なら肝切除は不要で,2次分枝との吻合なら内側区域(S4)の部分切除のみで吻合ができる.「肝内胆管」の正確な定義はなく,外科手術の際肝門部で「肝外」と認識できる部位より遠位側をこう呼んでいるらしい.しかし実際に胆管の全周が肝実質に囲まれている部位は,3次分岐以遠である.肝門部では1次・2次分岐は厚い結合組織に被われ,また肝実質の背側に潜り込み,かつ尾状葉と右葉後区域の接合部の腹側を走るので,手術の際認識しにくく,いかにも肝内に入つているように見える.しかし肝実質を実際に割つてみれば明らかになるが,全周を肝実質に囲まれる,文字通りの「肝内」を走行するのは,右葉では,中肝静脈と交叉した(中肝静脈が腹側で,胆管を含むグリソン系3脈管が背側を通る)直後からである.
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