特集 外科外来マニュアル
私の治療
一般
褥瘡
若井 淳
1
1東京警察病院形成外科
pp.777-779
発行日 1982年5月20日
Published Date 1982/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407208022
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□概説
通称"とこずれ"といわれるもので,主として,骨突出部の皮膚ならびに,皮下組織が長時間,持続的に,あるいは断続的に圧迫されると,阻血性壊死を来して起こる疾患である.褥瘡には,麻痺性褥瘡と,非麻痺性褥瘡とがあるが,麻痺性褥瘡には,脊髄損傷による場合が最も多く,知覚麻痺と栄養神経障害のため,簡単に本疾患を起こし易く,その症状も急速に進展する.
非麻痺性褥瘡は,長期療養している慢性疾患患者,貧血や栄養不良の患者,老人のねたきりの患者,また,骨折その他で,不適当なギブスによる圧迫を余儀なくされた場合等に起こるものである.
褥瘡の好発部位は,その75%が仙骨,大転子,坐骨部であり,踵,棘突起部がこれに次ぎ,膝蓋骨部,脛骨稜,脛骨や腓骨の穎部,腸骨前上棘,肘部などの骨突出部である.
褥瘡の初期は,皮膚の紅斑状変化で始まり,ついで,発赤,硬結,時に水庖形成を伴い,遂に皮膚組織の壊死を来し潰瘍となる.
潰瘍底には,結合織壊死物が付着して容易に浄化されず,次第に周辺に向つて拡大すると共に深部にも進んで,筋組織を侵し,さらに進んで,腱,靱帯,骨にまで及び,骨髄炎を起こし,周囲軟部組織に蜂窩織炎を起こすにいたるものである.特に,神経麻痺のある患者では,直腸,膀胱麻痺のために,大便や尿によつて汚染される機会多く,これによつて感染を助長し,治癒を大きく阻害する.原病と相侯つて,患者の苦悩は言語に絶することがある.
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