histoire de la chirurgie 外科史外伝—ルネッサンスから"外科の夜明け"まで・3
太陽王ルイ14世と外科
大村 敏郎
1
1川崎市立井田病院手術室
pp.381-384
発行日 1982年3月20日
Published Date 1982/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407207915
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□太陽王と床屋
ルイ14世(Louis XIV)(図1)は1638年,ルイ13世の息子として生れた.父の死により,5歳で王位を継いだのだが,彼ほど長期にわたつて王位についていた者は珍らしい.それだけでも特記すべき人物である.しかしそれに止らず,宰相マザラン(Mazarin,1602〜1661,イタリー出身でフランスに帰化した.父王13世の時代のリシリューと共にフランス史上有能な宰相として名をとどめている)の死後は全権を握つて,絶対王制を押し進め,ヨーロッパ中にその名を轟きわたらせた.歴史家をして,彼の死亡する1715年までを17世紀と呼びたいと言わしめた程の偉大な存在であつた.残された画像からみても,豊かな髪(もつともこれは当時流行した「かつら」である)をしており,太陽王と呼ばれるのに相応わしい威風堂々の偉丈夫である(図2).
ついでに述べておくが,このかつらをくしけずるのは床屋外科医の仕事であつた.ひげ剃りも当然そうである.古い資料の絵でみるとひげ剃り用の皿というのがよく出てくる.楕円形の金属の皿で首に当てる部分に丸く切れ込みが入つている.これは床屋外科医を象徴するものとして,店先に看板としても用いられていたようである.
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