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はじめに
繊細な機能を有する手指が損傷された場合,適切な初期治療を行なつて機能障害を最小限にとどめる必要がある.この初期治療の最低限の目標は適確なdébridementによる創感染防止であり,第一線で患者を治療する医師はこのために最大限の努力をはらわなくてはならない.来院時,大部分の患者は上腕や前腕を手ぬぐいなどで緊縛し,末梢部分がチアノーゼとなつたり,あるいはかえつてうつ血させて静脈断端からの出血を増していることが多い.通常,多数指の切断または手関節部の切断で橈骨・尺骨動脈が損傷されていても,局所の圧迫止血と患部の高挙を行なえぼ致死的な出血をみることはない.したがつて余裕があれば,清浄な流水で創を洗浄し,手ぬぐいやガーゼを用いた局所の圧迫止血を行ない,手を高挙しつつ来院するように指導する.さらに現在では微小外科(マイクロサージェリー)の発達により大学病院や市中の一般病院で再接着手術が行なえるようになつた.したがつて鋭的な切断例で再接着の可能性がある場合には,完全に切断された末梢部分はビニール袋に入れ,これを密封した状態で氷(約4℃)につけ,不全切断例では血行の途絶した部分をアイスパックなどで冷却しつつ来院させるのがよい.各種条件から再接着の適応がなく,やむ得ず行なう最終的な救済処置の切断術や断端形成術は,他の方法と比べて疼痛の持続・治癒・リハビリテーション期間が短く早期の社会復帰を可能にするなどの利点があるが,身体の一部を永久的に失うという大きな欠点を有している.
従来,一次的切断術の適応は6つの組織(皮膚,腱,血管,神経,骨,関節)のうち,3つ以上の組織が損傷され,このために特別の治療が必要な場合と考えられてきた.このような重度損傷手指の治療を行なうに当つては,損傷部の組織たとえば皮膚,腱,骨などを有効に利用し,残存部分の機能をできるかぎり引き出して有用な手指に再建するように努力することが大切である.
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