Japanese
English
特集 上部消化管出血—保存的止血法のトピックス
緊急止血のための薬物療法
ピトレッシン
Pitressin in the management of upper gastrointestinal hemorrhage
草野 正一
1
,
真玉 寿美生
2
,
辻 光昭
3
Shoichi KUSANO
1
,
Sumio MATAMA
2
,
Mitsuaki TSUJI
3
1北里大学医学部放射線科
2北里大学医学部内科
3北里大学医学部外科
pp.1089-1096
発行日 1981年7月20日
Published Date 1981/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407207749
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はじめに
脳下垂体後葉からの抽出ホルモンであるバソプレシン(商品名ピトレッシン)は,1956年Kehneら1)によつて食道静脈瘤破裂患者の止血治療薬としてはじめて臨床応用されている.ピトレッシン10〜20単位を5%ブドウ糖液100〜200mlに溶解して約20分間で点滴静注する.この大量静注法は,静注をやめるとすぐ再出血することが多く,かつ繰り返して大量静注するとだんだん効果がうすれる過耐性のあることもわかり,わが国においても臨床家の期待を少なからず裏切る結果となつた.
しかしながら,1968年Nusbaum,Baumら2)がセルジンガー法で経皮的に上腸間膜動脈に留置したカテーテルからピトレッシン毎分0.2〜0.4単位を,動注用ポンプ(筆者らが使用している装置は,アトム社製輸注ポンプ又はエクストラコーポリール社製ホルターポンプ)を用いて持続的に注入する,ピトレッシンの微量持続動注法の有用性を指摘してから,この止血法が北米を中心に追試され,止血成績も輸血,輸液などによる保存療法と比較すると満足しうる結果がえられ,かつまた重篤な合併症も少なかつたことから食道静脈瘤破裂患者に対する止血治療法として広く受け入れられるようになつた.この方法は,その後間もなく動脈性出血に対しても応用され3),出血性胃炎,マロリー・ワイス症候群,浅い出血潰瘍などに対してすでに確立された止血治療法となつている.
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