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膵移植の可能性と問題点
出月 康夫
1
1聖マリアンナ医科大学第1外科
pp.529-532
発行日 1980年4月20日
Published Date 1980/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407207419
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□はじめに
膵移植はこれまで主として重症糖尿病の治療への応用を目的として検討されてきた.膵移植の実験的研究の歴史は前世紀末にまで遡ることが出来るが,1960年代の後半には臨床的にも脳死の屍体から摘出した膵臓を利用して同種膵移植が実施されるようになり,インスリンや血糖降下剤などでは管理の困難な若年性糖尿病末期患者の治療に効果のあることが明らかにされている1).とくに実験的研究では糖尿病に伴う小血管病変が膵移植によつて防止されることが明らかにされており2-4),同種移植における拒絶反応を容易に抑えることが可能になれば,膵移植は最も理想的な糖尿病治療の手段として期待される1).
内科的疾患と考えられてきた糖尿病の治療は,これまで外科医の中では膵移植に関心をもつ少数の研究者以外にはあまり興味のない分野であつた.しかし,術前,術後の患者管理や手術手技の進歩によつて,膵臓に対しても最近は大きな手術侵襲を加えることが可能となり,膵癌や慢性膵炎に対しても積極的な治療が試みられるようになりつつある.膵移植術は膵臓にとつて最大の侵襲となる手術であるが,直接に臓器移植に関係の少ない一般外科の立場からも,これまでの膵移植の研究から得られた成果,とくに手術手技上の問題点や移植膵機能などについて知つておくことは,日常の膵外科を進めて行く上に参考になろう.
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