Japanese
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Current Opinion
細胞移植治療―可能性と問題点
Cell Transplant Therapy
竹下 享典
1
,
近藤 隆久
1
,
因田 恭也
1
,
室原 豊明
1
Kyosuke Takeshita
1
,
Takahisa Kondo
1
,
Yasuya Inden
1
,
Toyoaki Murohara
1
1名古屋大学大学院医学系研究科病態内科学講座器官制御内科
1Department of Organ Regulation and Internal Medicine, Nagoya University Graduate School of Medicine
pp.493-499
発行日 2003年5月1日
Published Date 2003/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100659
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循環器領域における近年の細胞移植治療の発展
当初,血液疾患の治療として始まった細胞移植治療は,現在,障害臓器の置換,修復,生理機能の回復を目的とし,循環器領域を含めた多彩な疾患を対象とできるものとなった.培養および分化誘導に関する組織細胞工学と,組織の足場および移植技術を向上させる材料工学の相乗的な発達に伴い,骨,軟骨,皮膚,神経,肝臓,心筋,血管,膵臓β細胞など応用は多岐にわたる.現在,細胞移植治療の研究状況はbenchからbedsideへ移りつつあり,safety and feasibilityを模索する試みでもある.
細胞移植治療には適切な種類,質,量の細胞を適切な手段で移植する必要がある.そこで,この進歩に大きく寄与したのが自己複製能,多分化能を有する幹細胞についての研究である.
胚性幹細胞(ES細胞)は,後述の体性幹細胞と比較して増殖が活発で,分化の全能性が保たれているため,細胞移植に最も適していると考えられている.1998年にヒトES細胞が樹立され,2001年にはこの細胞が血球系細胞1)や心筋細胞2)へ分化誘導されることが報告され,臨床応用に近づいた.しかし,胎児に由来するということから,社会的倫理的制約があり,均質な細胞を得て,未分化の状態を保ちつつ増殖させ,均質に分化させるといういわゆる“品質管理”が困難であり,まだ技術的なハードルもある.また,移植後の免疫学的問題などの課題もある.
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