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特集 外科医のための麻酔
救急患者の麻酔—最少限必要なチェックから導入まで
Emergency anesthesia:minimum check for preanesthetic prepartion and induction of anesthesia
茅 稽二
1
Keiji KAYA
1
1順天堂大学医学部麻酔科
pp.187-190
発行日 1980年2月20日
Published Date 1980/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407207373
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はじめに
救急手術患者の麻酔でも特に予定手術患者の麻酔と異なるわけではなく,患者の全身状態を十分に把握して,その患者に最も適当と思われる麻酔を行なうのが原則である.ただ救急手術ではその救急度に応じて,色々なデーターを集めるためにどれだけの時間的余裕が許されるか,また夜間,休日等ではその医療機関の検査体制の如何が問題となる.外傷等による大量出血,また呼吸,循環に重大な障害をおよぼしている外科的疾患で,入院後直ちに手術をしなければならず,殆んどデータなしで麻酔を行なわなければならないこともある.しかしこのようなケースはそれ程多いものではなく,一般的にいつて救急手術といえども外科医が患者に接触してから,全身状態のチェックに必要な最少限度のデータを収集する時間的余裕はあるはずである.手術に必要なデータ,輸血の準備等があると同様に,麻酔に必要なデータもあるが,しかし両者は必ずしも明瞭に区別されているわけではなく,全身状態の把握という意味で麻酔医の要求するデータは外科医も必要とするもののはずである.頭部外傷の救急手術で頭部のX線写真は何枚も取つてあるのに,胸部写真がなかつたたり,血液型はチェックしているが血算のデータがなかつたりすることがあり,結局その時の外科医の医療に対する考え方がポイントである.また病院の救急体制については,休日,夜間には外科,麻酔医はいても検査,X線技師等のパラメディカルの人員が不在で,たとえ時間的余裕はあつても殆んどデータが得られないこともあり,救急医療行政の不備が問題となる.救急指定病院の条件については詳かではないが,少なくとも手術・麻酔に必要なデータが得られる体制作りが大切である.
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