グラフ 胎児奇形の映像診断
先天性肺嚢胞症
相良 洋子
1
Yoko Sagara
1
1東京大学医学部産科婦人科学教室
pp.148-149
発行日 1984年3月10日
Published Date 1984/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206947
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先天性肺嚢胞症は,近年,症例報告が増加し,小児外科の領域ではかなりポピュラーな疾患になっている。軽症例では,生後数ヵ月から数年の間に偶然発見され,外科的治療により良好な予後を得ることができる。しかし重症例では,既に胎児期に発症し,救命は箸しく困難である。
ここに示す症例は,妊娠29週に当科で診断した先天性肺嚢胞症である。妊婦は既に著明な羊水過多症を伴って,妊娠26週,当科を初診した。超音波断層法では,図1に示す如く,胎児の胸郭内に多房性の嚢腫様陰影が発見された。この写真には腹水の存在も認められる。図2では頭皮下浮腫が明らかで,胎児水腫の状態であることがわかる。さらに図3では,長径9cmに近い嚢腫様陰影のために心臓が胸腔の隅に圧迫され,正常よりかなり小さくみえる。胸郭内にこのような像を示す病態として嚢腫あるいは横隔膜ヘルニアが考えられるが,いずれにしてもこの異常なmassによる心血管系の機械的圧迫が循環不全をひきおこし,胎児水腫や羊水過多症に至ると考えられている。図4は羊水胎児造影を行った時の写真であるが,胎児の腹腔内に消化管が造影されており,横隔膜ヘルニアは否定された。この写真でも頭部のdoublecontourが明らかである。図5に出生時の状態を示す。上半身,特に頭部の浮腫が著しい。
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