特集 これだけは知っておきたい手術の適応とタイミング—注意したい疾患45
—いま,内科では—急性膵炎の内科治療の実際と手術適応
石井 兼央
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1旭川医大第2内科
pp.923-924
発行日 1979年6月20日
Published Date 1979/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407207205
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上腹部激痛,悪心,嘔吐を訴える患者を診てまず注意することはショック症状の有無である.ショック状態であれば血液生化学(肝機能,腎機能,電解質,血清アミラーゼ),末梢血(白血球,赤血球,ヘマトクリット)の検査のための採血をし,輸液(リンゲル液,生理食塩水,ラクトリンゲル液など1日500〜1000ml点滴静法)を行ない,強心剤,昇圧剤,呼吸賦活剤を加える.輸液量が多いと膵浮腫を助長するおそれがあるので1日1lくらいにとどめる.貧血が著明であれば輸血(1日約200ml)にする.同時に鼻孔ゾンデによる胃液吸引を行なう.鎮痛剤として塩酸ペチジン(1回25〜50mg静法)を投与する.硫酸アトロピン(1回0.5mg皮法)を併用すると膵液分泌抑制と鎮痛効果の増強が期待できる.モルヒネ剤はOddi活約筋を収縮させる作用があるので悪心,嘔吐を起こしやすく膵病変を悪化させるので禁忌である.またモルヒネ剤を投与すると約3割の頻度で血清アミラーゼ高値をきたすので最初にモルヒネ剤を投与し血清アミラーゼの測定を行なうことは避けるべきである.やむをえずモルヒネ剤を投与するときはオピアト,オピスコを用いるか,硫酸アトロピンを併用する.疼痛が中等度であれば合成鎮痛鎮痙剤(1日4〜6回皮注)でよいだろう.二次感染を防ぐために広範囲抗菌スペクトルの抗生物質の静注も行なう.以上の保存療法に加えて抗トリプシン,抗カリクレン作用を有するトラジロールやFOYなどの抗酵素療法を行なうことも治療効果を向上させることが多い.FOYは最近開発された分子量約417の合成蛋白分解酵素阻害剤である(1日200〜300mg点滴静注に加える).
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