特集 これだけは知っておきたい手術の適応とタイミング—注意したい疾患45
ストレス潰瘍
西村 和夫
1
1神戸大学医学部第1外科
pp.819-823
発行日 1979年6月20日
Published Date 1979/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407207184
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
■なぜ内科治療とのControversyになるか
最近,重篤災害受傷の増加や,手術適応の拡大による過大手術侵襲後にストレス潰瘍がよく経験される.ストレス潰瘍の名称はHans Selye(1936)がはじめて医学の分野に用いた言葉であり,以来広く使われている.ストレス潰瘍の概念は,その発生機序が十分に解明されていない今日,正確に述べることは困難で,情操的ストレスから災害などによるストレスまで,雑多なストレスがあり,人により概念に多少の差があることは止むをえない.しかし,一般に,何らかの有害刺激(ストレス)が生体に加えられると,主として胃十二指腸に発生する急性潰瘍性病変と解釈されている.
古くから脳疾患,脳手術後のCushing's ulcer熱傷後のCurling's ulcerはその代表例としてよく知られている.本症の特徴はいずれも胃十二指にエロジオン,潰瘍が急速に発生するので,心窩部痛,嘔吐,吐下血などの症状が急激に発症する.さらに多くは悪条件下で,速やかに診断し,速やかに適切な処置をする必要がある.臨床上ストレス潰瘍でもつとも問題となるのは大量吐下血と穿孔であるが,穿孔は発生数が少なく,また外科的処置のほかに救命処置がなく,いまさら述べる必要がないので,以下出血例について述べる.
Copyright © 1979, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.