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精神的ストレスによる胃粘膜変化
ストレス潰瘍といつても,内科と外科とでは取扱う対象が異なる.筆者らのように,各科における消化管出血例のすべての内視鏡検査を依頼されるところでは,いろいろなかたちのストレス潰瘍をみているが,一般に内科でよく遭遇するのは精神的要因に基づくストレス潰瘍である.これは外科で取扱われる手術侵襲によるストレス潰瘍とはいささか趣を異にするので,両者を同じものとして論ずるわけにはいかない.それはともかくここでは内科の立場から精神的ストレスによつて起こるストレス潰瘍を中心に述べることにする.
精神的ストレスによつて起こる胃粘膜変化としては,①白苔を有する浅い急性の潰瘍性変化の多発するもの,②出血性エロジオンの多発するもの,③び漫性の粘膜出血だけをみるもの,の3つの基本的なタイプがあるほか,④これらが混在する例もある.①がヒトにみられる典型的なストレス潰瘍のかたちであり,②,③は潰瘍という表現は妥当でないと思われる変化であるが,一応これらも含めて潰瘍性変化としている.そしてこれらの変化は比較的短時日に消失するのも特徴的である.①の変化は多くの場合2〜3週くらいで消失する.少しく深い潰瘍では2カ月前後ということもあるが,むしろめずらしい.②のかたちは1週間以内に,また③などは1〜2日くらいで消失してしまうことが多い.問題となる出血(吐血・下血)にしても,精神的ストレスによるものでは,一般に比較的その量が少なく,輸血を必要としたのは252例中14例(5.5%)に過ぎない.したがつて,精神的要因によるストレス潰瘍においては,早まつて手術をしないことである.たとえすさまじい変化であつても,また一見悪性所見のように見えても(こういうことはよくある),それが精神的ストレスによると思われるときには,まず2週間経過をみるとよい.そうすればその潰瘍は良性の顔付を呈するようになる.
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