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はじめに
悪性脳腫瘍の治療は1930年代Cushingにより幕明けされて以来,約半世紀近い歴史を持つているが,今日依然としてその治療は難かしい.Cushingの活躍した当時すでにほぼ完成された手術技術だけではglioblastomaの術後の生存期間は最高でも1年未満であつた.1940年代より放射線治療が併用されるようになり,はじめてわずかながら2年生存者が出てくるようになつてきた.1950年代の初期の化学療法では延命はもたらされず,1960年代後半になり,放射線増感物質であるBUdR(bromo-uridine)の併用により,悪性gliomaの治療成績が向上した.同時に化学療法の併用が単純放射治療よりも優れていることが明らかにされた.今日glioblastomaの治療成績でもつとも優れた効果をあげている薬剤としては,BCNU,Vincristine Procarbazineの併用による米国脳腫瘍study groupの処方があるが,これによる術後の平均生存期間は52週程度である.すなわち,術後生存期間約1年が,この疾患に対する現在の治療法の限界ということになる.脳腫瘍に対する免疫療法は1960年代後半より補助療法としてスタートしてきた.さて悪性gliomaの本質的な治療は開頭手術後に始まると考えても誤りではない.手術は腫瘍の量をできる限り減量して減圧し,次の治療への橋渡しをするわけで,第二段階の化学,放射線治療と合わせて寛解導入療法の手段の一部になつている.その後,第三段階の維持療法として定期的な化学療法を行なっているが,この第二,第三段階に免疫療法を加えると治療成績の向上が期待できる.
ここでは,今日私共が扱う腫瘍の中で一番悪性なglioblastomaと転移性脳腫瘍の治療方針と採用している薬剤の使い方,ならびに治療成績についてまとめ,検討したい.
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