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はじめに
膵癌に対し膵頭十二指腸切除や膵体尾部切除が行なわれるが,これらの膵部分切除術後の遠隔成績は他の消化器癌に比べて著しく悪く,近年,より根治性を高めるために膵全切除の必要性が強調されている1-6).その他,慢性膵炎,insulinoma,膵嚢胞,膵外傷,胃癌の膵浸潤などに対しても種種の範囲の膵切除が行なわれる.このような膵全切除を含む膵の広範切除が比較的安全に実施することが可能となつてきた.しかしながら,膵大量切除によつて膵機能の低下・脱落をきたすことも明らかであり,これを十分にcontrolするための対策が必要であり,手術術式自体についてもその適応は慎重に決定されなければならない.たとえば,慢性膵炎に対する95%膵切除を提唱したChildらは,術後の膵機能脱落による影響をすくなくするために切除量について再検討を加えている.内外分泌を営み,全身の各臓器と密接な関係を有する膵臓の役割を考える時,全切除を含む膵大量切除の生体に及ぼす影響は複雑多彩で,臨床上これに対応することはまだまだ容易なことではない.
一方,膵臓より分泌されたinsulin,glucagonは門脈を経て直接肝臓に達し,その後体循環に入るが,その間かなりの量のホルモンが肝臓によつてtrapまたは分解される.この肝臓にとり込まれたホルモンの影響する代謝過程については未だ未解決の問題が多く,膵全切除を含む膵広範切除が積極的に試みられるためには,肝臓を中心とした代謝研究が急務である.今回は膵大量切除後の栄養について論じるわけであるが,以上のことを念頭において,まず膵切除による外分泌上の問題をとりあげ,ついで糖代謝および肝のエネルギー代謝との関連について述べ,それをもとにして膵疾患患者の膵切除後の問題点について言及したい.
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