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胆石症の手術に際しての総胆管切開術の適応として,Glennは,(1)総胆管結石,(2)上腹部痛または発熱を伴つた黄疸の既往があるとき,(3)総胆管の拡張と壁の肥厚のあるとき,(4)萎縮胆嚢で,その中に結石があるとき,(5)胆嚢管の拡張のあるとき,(6)膵頭部に硬結があるとき,および(7)60歳以上で,胆道疾患の経過が長い場合,などをあげている.その他,胆嚢内に多数の結石のあるとき,頑固な胆汁瘻がある場合などもあげられる.要するに,総胆管の拡張や壁肥厚は炎症や結石,腫瘍または胆道の機能異常に由来する胆汁流出障害があつたことを示すものであり,このような場合には例外なく総胆管切開術を行なうべきものである.これが遺残結石や胆嚢摘出後遺症の発生を最少限度にとどめるための第一歩である.
さて,総胆管切開を行なつた場合,胆管を一期的に閉鎖するか,排胆T-tubeを設置すべきかについては従来より種々論議されている.T-tubeの設置に反対するものは胆管壁の損傷や出血,体液の喪失,創治癒の遅延などを主な理由としている.しかし総胆管切開を必要とする症例では程度の差こそあれ,胆汁のうつ滞や感染が存在するので,ある一定期間汚染胆汁を体外に排除し胆道内圧を低下させて肝負荷を軽減させてやる必要がある.また肝内結石は胆石症全体の5〜10%にみられるが,肝内結石の手術後には結石遺残や肝内胆管の状態を観察する必要がある.このような肝内結石を含めて胆石症手術後の遺残結石や胆泥の排除にはT-tubeよりの洗浄が行なわれる.その他,術後胆管造影,胆道内圧測定なども可能である.一方,T-tube挿入による胆管損傷のための狭窄や出血は極めて少なく,注意すれば避けられるものであり,また胆管下部に通過障害さえなければT-tube抜去後数日以内に創は閉鎖するので,創傷治癒を遅延させるものではない.以上のような理由から総胆管切開後にはT-tubeを設置するものが多い.著者はT-tube設置の適応として,(1)黄疸のある場合,(2)胆道系に炎症があり,胆汁が汚染されている場合,(3)胆管内,とくに肝内胆管内に多数の結石,とくにビリルビン石灰石がある場合,と考えている.その他,手術後に胆道系の病態を観察する必要がある場合にも挿入することがある.以上,胆石症手術の場合のT-tubeについて述べてきたが,胆管損傷の場合,あるいは胆道再建術の場合にもT-tubeがしばしば用いられることは周知の如くである.
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