外科教育を考える・6
麻酔科研修—Ⅱ.腹部緊急手術の麻酔
西岡 克郎
1
,
斉藤 浩太郎
1
1東北大学医学部麻酔科
pp.245-249
発行日 1978年2月20日
Published Date 1978/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407206899
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I麻酔前患者の評価
一般病院の緊急手術は,外傷に伴う腹部内臓損傷,腸閉塞,胃十二指腸潰瘍の穿孔または出血,嵌頓ヘルニア,急性虫垂炎およびこれらの手術後の腹膜炎,帝王切開,子宮外妊娠の破裂,卵巣嚢腫の軸捻転等が多い.すなわち腹部の緊急手術がその大部分を占めているといえよう.これらの疾患は,術後の再開腹を除いては,外からまたは他科から紹介されることが多く,時間的にも日中より夕方,夜間に片寄つている.また全身状態が不良であるにもかかわらず,麻酔の選択や施行に必要な検査は不十分のことが多い.検査が行なわれていても,患者の全身状態は刻一刻と変化しているので,その検査を施行した時と,麻酔を施行する時との時間的ずれを考慮して検査成績を評価する必要がある.患者は不安,苦痛または疼痛のため,麻酔科的問診のみで十分な情報を提供してくれることは少ない.したがつて前回の麻酔前回診時の重点項目の他に,家族,主治医,前主治医などからも情報を引き出す努力が必要である.すなわち体重の変化,経口,非経口水分摂取の状態,嘔吐の回数とその性状,血液や電解質のバランス等である.その他最終の食事や水分摂取の時間とその内容を知つておくことも大切で,緊急手術を要する外傷および急性疾患の患者においては,心因性に胃の排泄運動が停止し,内容が停滞していると考えてよい.
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