Japanese
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特集 胆道手術後の困難症
胆道ジスキネジー
Biliary dyskinesia
秋田 八年
1
,
谷川 尚
1
Hachinen AKITA
1
,
Hisashi TANIGAWA
1
1鹿児島大学医学部第2外科
pp.1561-1568
発行日 1976年12月20日
Published Date 1976/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407206635
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はじめに
かつて胆道ジスキネジーはColp1)の報告に代表されるようにいわゆる胆道手術後困難症の代表的なものと考えられていた時代があつたが,現在では診断法の進歩とともにいわゆる胆道手術後困難症に対する積極的再手術による原因解明の結果,遺残または再発結石,胆道狭窄,狭窄性乳頭炎,遺残胆嚢管,癒着障害あるいは随伴性膵障害等の器質的病変が頻度の上では主因をなすことが明らかとなつた2,3).教室の検討では殊に胆石手術例の5〜10%を占めるいわゆる軽度困難症についてはその約半数に随伴性膵障害が関与することを明らかにし4,5),純粋な意味での胆嚢摘除後ジスキネジーは稀であろうと主張してきた6).
そもそも胆道ジスキネジーとは何らかの理由で胆道系の自律神経性調節あるいは消化管ホルモンによる調節機構に破綻を生じた結果,臨床症状として胆道痛や悪心,下痢などの消化器症状を伴うに至つたものと定義される.したがつて本来の胆道ジスキネジーは,結石,炎症はもちろん,胆道系の奇形や癒着,瘢痕などの器質的変化は伴わないものと解釈される7,8).しかし純粋に機能異常のみでこのような症状が発生しうるのか,通常の診療法では把握し難い微細な器質的病変が存在するのではないかといつた疑問が残る.
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