今月の主題 胆道疾患—診療の実際
この病態をどう扱うか
胆道ジスキネジー
岩村 健一郎
1
1東海大内科
pp.222-224
発行日 1976年2月10日
Published Date 1976/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402206425
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肝における代謝産物の排出手段であるにせよ,あるいは消化機能の重要な担い手であるにせよ,胆汁は肝において産生され,胆道系を介して十二指腸へ送られる.すなわち,胆道系の主な任務は胆汁の輸送にあり,しかも生体の要求に応じて緩急自在に十二指腸内へ排出する役割をうけもっている.そのためには肝における胆汁の分泌圧や胆汁の性状もまた胆汁の流れに関与する因子として考えられなければならないであろうし,胆道系の壁構造や壁の緊張度や胆道系各部の運動の協調能,さらにそれらの神経支配などもまた重視されなければならないであろう.胆道ジスキネジーとはこれらの各因子一つ一つの,あるいはまたいくつかの因子の異常の表現とも,また各因子の協調能の異常の表現とも考えることができるであろう.だが,これらの異常を臨床的にどのようにして把握したらよいのであろうか.この疾病概念の存在にすら疑いの眼をむけざるを得ないことがあるのは,とりもなおさず臨床的に把握すべき方法論のむずかしさがあるからであろう.それにもかかわらず,臨床的に胆道ジスキネジーと診断せざるを得ないことがあるのも事実である.この病態をどう扱うかというテーマは病態そのものをいかに理解するかということとともに,臨床的にどのように把え,どのように治療に臨むかということにあろう.常に病態のよりよい理解を念頭におかなければ現実の診療は無意味であろうし,実際上不可能といってよい.
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