Spot 生体材料の展望・1
生体管状組織の人工物化の1つの試み(その1)
秋山 太一郎
1
1日本医用高分材料研究所
pp.58-59
発行日 1976年1月20日
Published Date 1976/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407206419
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生体の管状構造物を扱うことは化学工場の配管と共通的なものがある.自動制御弁,逆流止めなどの仕組みで,その仕組みは相互連動して,いわゆる自動制御機構ができている.生体をバイオメカニズムの立場からみればクローズドシステムの中で生命維持のために,功妙な仕組みが見事な制御機構として成り立つているが,生体の管状物の人工物化にあたつては生体固有のいわゆるバイオメカニズムの感覚とを併用してはどんなものかというのが私の提案である.人工蔵器は本来インターディスプリナリーだから当然であるが.今日生体の管状組織(血管,食道,胆管,尿道)の人工物化の試みは,大きな動脈系の人工物化以外は実用の城に達しているものはまずない.その原因を大つかみに要約すると,
① 管状物の材質の選択の誤り
② 管状物の構造上の誤り
③ 機能再現法に対する見解の不備,不徹底などが主なものとしてあげられるであろう.したがつて生体固有の構造や機能を,どの点と,どの部分をどこまでゆずつて(許容,妥協して)再現するべきか.それがためにはどんな材質で,どう構造づけるかで人工物の設計の基準がおのずと設定されるはずである.これはもちろん,設計者の考えが土台になつたわけであるが,ここにこれらの基本的な問題をごく単純化して項目別にあげてみると図1のようになる.この稿では1〜3までの項目について述べる.
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