特集 遠隔成績よりみた早期胃癌
遠隔成績からみた早期胃癌の特性
村上 忠重
1
Tadashige MURAKAMI
1
1東京医科歯科大学第1外科
pp.13
発行日 1976年1月20日
Published Date 1976/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407206412
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胃癌の細胞が胃の粘膜に発生してから何年経つたら人を殺すのかという問が,これまでしばしば発せられたが,ここでは漸くその問が,何年間早期胃癌の域に止まるかという所まで縮まつてきた.もし早期胃癌の期間が10年以上であつたら,早期胃癌の手術後に5年生存率をとつても無意味である.ほうつておいても5年以上生きられたはずの患者に手術をして5年生き延びさせたといえば,苦笑を誘うに過ぎないであろう.したがつて早期胃癌に関する限り,役に立つ生存率は少なくとも10年生存率でなければならないと以前から言われていた.しかしそうは言うものの,早期胃癌の概念が日本全国にひろがつてまだ10年そこそこの時点でそれを言つても始まらない.そこで私どもは止むを得ず,進行癌と同様の5生率を算出することで我慢してきた.そして早期胃癌の5生率は滅法よい.それから曲線を延長すると10生率といえども多分よいはずという気安めの議論を行なつてきた.
やつと10生率がそろそろ表面に出せる時期が来たようである.大阪成人病センターの10生率は73%を示している.勿論その値は進行癌のそれより遙かによい.しかし75%を割る数字には些か不満である(ただし相対生存率ではないことに注意).
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