Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
術後の患者,殊に消化管外科の患者はある期間経口的に食餌を摂取できないことが多く,静脈内への投与が余儀なくされる.このような場合最優先されるものは,水と電解質であり,手術侵襲の小さいものや短期間の摂取不能の者では生体にstoreされた脂肪,蛋白の異化により飢餓の状態,つまりカロリーと蛋白の負平衡にはよく耐えるものである.しかし手術侵襲の大きいもの,感染などの合併症を生じたもの,長期間摂取不能の者であれば十分なカロリー,蛋白の投与という有機レベルまで考えて代謝の維持をはからねばならない.低栄養状態が続くと創傷治癒の遅延,血液および細胞の再生減退,抗体形成障害(感染に対する抵抗弱),浮腫,血液凝固不良,褥瘡,ホルモンと酵素の合成不良などが生ずる.これらはすべて蛋白質の不足の結果生ずるものである.したがつて栄養輸液ではいかに蛋白の喪失を少なくするか,いかにうまく蛋白を与えるかということにつきる.
静脈栄養は1967年にDudrickが高張糖液とアミノ酸を中心静脈から与える方法を紹介してから急速に普及した1,2,3).この栄養輸液は20%のブドウ糖と3%のアミノ酸の配合からなるものであり,中心静脈にカテーテルを挿入することにより高張液の点滴を可能ならしめ,これによりアミノ酸とともに大量の非蛋白のカロリー源を投与することができるようになり,アミノ酸がエネルギー源として消費されるのを防いだことが成功の大きなカギである.一方ヨーロッパではそれ以前から脂肪乳剤を加えた栄養輸液が開発され広く普及している4,5).カロリー源としていずれを主に求めるにせよ静脈栄養の目的は体蛋1「を保持することにあり,体蛋白の喪失に対しては蛋白をもつてしか補うことができないのはいうまでもない.
Copyright © 1975, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.