Japanese
English
臨床研究
甲状腺乳頭状癌に対する術後長期甲状腺ホルモン投与についての一検討
Postoperative administration of desiccated thyroid to the patients of the papillary cancer of the thyroid
稲垣 秀生
1
Hideo INAGAKI
1
1東京大学医学部第1外科
pp.941-944
発行日 1974年7月20日
Published Date 1974/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407206084
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
甲状腺分化癌には内分泌依存性endocrine depen-dencyがあり1,2),甲状腺ホルモン投与がことに乳頭状癌で40歳以下の年齢層の場合3),その術後再発あるいは進行の予防,肺転移などに有効であることは1-5),一部に批判的な報告6)もあるが一般に認められている.この際の甲状腺ホルモン投与の目的はTSH抑制にあるが1-6),術後長期投与の場合の投与量とTSH抑制効果との間の関係はまだよく分つていない.またTSH抑制試験でT3(triiodothyronine)の投与量がある程度以上になるとその効果は同じであるという報告や7),この事柄は長期投与ではさらに強調されるという報告8)から考えられるように,必要量以上の投与はおそらく無意味であり,さらに過剰投与,すなわち理論的には甲状腺ホルモンの1日代謝量以上の投与では,たとえ甲状腺機能検査が正常範囲の値であつても長い間には生体にとつて有害でもありうると考えられる.以上のように乳頭状癌の術後再発予防のための甲状腺ホルモン投与の際には,最も適当と思われる基準となる投与量があるはずであり,この点についての検討がこの報告の目的である.なお従来行なわれている投与量は131Ⅰ 24時間摂取率が5%以下になるようにする1),あるいは過量症状の出現しない最大量9)などといわれているが,いずれもその根拠がはつきりせず,前述のような諸点が考慮されたものではない.
Copyright © 1974, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.